【佐藤摩弥×石井寛子】“レジェンド”と呼ばれたい! 女性トップレーサーが勝負の世界で生き抜く美学を語る

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44年ぶりの女性オートレーサーとして数々の快挙を成し遂げてきた佐藤摩弥と、6月に500勝を挙げガールズケイリン界をけん引する石井寛子。活躍の舞台は異なるものの、彼女たちは常にトップ戦線で戦い、歴史を塗り替え続けてきた。今回、競単と競輪総合メディア「netkeirin」のコラボ企画として特別対談が実現。人気と実力、さらに美しさを兼ね備えた女性トップレーサーふたりに“勝負の世界で生き抜く美学”を語ってもらい、「競単」「netkeirin」両サイトでそれぞれ異なる内容をお届けする。

出会いはお互いギャップ萌え!

ーー実はおふたりは初対面ではないんですよね。

佐藤摩弥(以下・佐藤):今回で4回目くらいですね。

石井寛子(以下・石井):そうですよね。以前も対談させていただいたことがあります。

ーー初めて会った時の印象は覚えてますか?

石井:はい。有名な方なので、どんな感じの人だろうなと思っていました。会ったときに、もうちょっとキャピキャピ感あるのかなと思っていたんですけど… すっっっごい落ち着いてました(笑)。

佐藤:(笑)。私は「めっちゃギャルじゃん! 大丈夫かな!?」って思って…(笑)。

石井:(大笑い)

佐藤:でも話したらすっごい真面目だし、考えがしっかりされてて… ファンになっちゃいました。

ポリシーは「信頼できるレーサーでいたい」

ーートップ選手として歴史を塗り替え続けて来ているおふたりですが、同じ1着でも価値の違いはあるんでしょうか?

石井:私は一切ないですね。自力自在のスタイルだからこそ、なんでもありです。

佐藤:私も1着なら基本OKなんですけど、ハンデがある選手を抜いて、後ろが離れなかったりしたらこのままじゃダメだな、エンジン整備しないとって思います。もうちょっと何かしないと準決勝で戦えないな、と。

ーー勝ったけど内容に納得いかないということはないのですか?

石井:それはなくて。僅差でも、泥臭くても、どんな勝ち方でもいいです。ただ危険がないように、クリーンに走りたい。それはこだわりですね。

佐藤:私もこだわりはないです。むしろ『こだわりがないこと』がこだわりです。

石井:それ、前も言ってましたよね。

佐藤:はい。自分のルーティンを作っちゃうと心配になりそうで。走り方のこだわりは一緒で、私もクリーンに走りたい。ただでさえ危険な仕事で、選手同士の信頼関係のもと走っているので。相手を信頼していれば接近戦もできるんです。毎日違う人と走るので難しいんですけど、相手からみたときに“信頼できるレーサー”でいたい。

石井:すごくわかります!

佐藤:レースを壊すような走りは絶対にしたくないですね。

ーー公正安全な競走で勝つ、ということですね。では、得意な戦法は?

石井:差しですね。ですが、どんどん難しくなっていて、捲りもしなくちゃいけないし、逃げなきゃいけないときもある。気持ちよく差せたのは最近はないですね…。

佐藤:私はスタートが武器なので、スタート先行からの展開を作ります。ハンデ戦であれば同じハンデの人よりスタートで先行して、先手先手で早めに先頭に立つレーススタイルですし、大きなレースはトップスタートを切ってそのまま逃げ切るようなレースが得意ですね。

レースで冷静にいるために

ーー警戒されてなかなか思い通りの展開に持っていけないこともあるのではないですか?

佐藤:スタートは技術的なものだったりするので、相手が行かせたくないって思ってもなかなか止めるのは難しいんですよ。私にとって難しいパターンは、私と同じタイプの選手が一緒のときですね。スピードが速くてもスタートが遅い選手はそこまで怖くないんですが、同じスタイルの選手に先に行かれちゃうと抜くのも大変。スタートが速い選手が一緒だと嫌だなぁと思います。

石井:たしかに同じタイプの選手は難しいですね。競輪だと似た作戦になることが多いので…。私は競りにはいかないので、別の方法を考えなきゃいけなくなる。

佐藤:なんとか先に行きたいですけど、行けなかった場合のことは先に考えてます。なるべく後ろについて仕掛けたいですし、厳しい場合はなんとか後ろをキープできるように作戦を練ります。冷静に対応できるように、それぞれイメージを持って臨んでますね。

石井:私は10パターンくらい展開を考えます(笑)。500勝したんですけど、ほとんど頭の中に描いたパターンのどれかがハマります。「えっ、こんな1着あるの!?」っていう勝ち方は本当にないです。

佐藤:すごい…。

石井:一緒に戦う選手のことは研究しなさいと言われてきたので。

ーーガールズケイリンはランク分けがないですよね。ステージが違うメンバーと戦うとき、想定外の展開もありそうです。

石井:そういうときはみんなでレースを振り返ったりします。それで、してあげられる限りのアドバイスをします。

ーーガールズ選手が200人もいると、教えてもなかなか伝わりにくかったり、まだ理解できる段階になかったりはしませんか?

石井:たぶんわかりやすい言葉で伝えられてると思います。レースが怖いとか、どうしてみんなから離れちゃうんだろうとか、その子の悩みをなくしてあげたい。私もガールズケイリンのファンのひとりなので。今教えている子も教えると『本当によくわかります』って言ってくれて、どんどん自己ベストも出るし、そこがおもしろいです。

ーー石井選手が教えると、みんなある程度結果が出るんですか?

石井:全員結果が出ます。男子含めて全員。悪くなった人はいないんですよ。練習量と、技術面が大きいですね。あとセッティングが得意なのでやってあげると乗りやすいって言ってくれます。『あっ!』っていう、キラキラした顔を見るのが好きなんです。楽しい! って顔を見るのが好きだから、それで幸せをもらっています。

ーーすごい。オートレースもセッティングで結構変わったりしますか?

佐藤:ありますよ。50歳を過ぎている選手で、パーツはあまり買わないけどセッティングをすごく突き詰めてて、レースで速い人たちよりよっぽどセッティング能力が高いと感じる選手がいたりして。その人がいくら前のハンデだろうと話を聞きに行きます。パーツで解決しない、セッティングの大事さを改めて学んだりするので、すごく尊敬しています。

ーーほかに体の変化などがレースに影響することはあるんでしょうか。

佐藤:一番成績がよかったときは、やっぱり絞れてたかなと思います。モーターなので体重が軽いほど直線は進むし、オートレーサーは意識高い人ほどガリガリなんです。男性選手でも速い人は50~55キロが多いんじゃないですか。エンジンの良さを生かせるんですよね。イメージが(マリオカートの)ドンキーコングだとスタートダッシュが遅いし、ブレーキも利かないじゃないですか。オートはブレーキがないのでエンジンブレーキをうまく使って走らないといけない。軽いほうが初速のノリもいいし、エンジンブレーキも利いてくれる。だから今パーソナルトレーニングに行ってるんですよ。

競技の“顔”として意識していること

ーーおふたりは人前に出る機会も多いと思いますが、意識していることはありますか?

石井:伝えたいことを正確に伝えてもらうこと。文章や写真は必ずチェックします。見てくれるお客様がたくさんいるし、誤解はされたくない。言ったことがない強気な言葉が載らないように、自分の思いが正確に伝わるように気をつけています。

ーートラブルにもなりかねないですもんね。佐藤選手は?

佐藤:あんまり気にしたことなかったですね…。たまに(自分の記事を見て)ちょっと大げさかなと思ったりはするけど… すごいいい風に書いてくれてるなぁって思うことのほうが多いかもしれない(笑)。

ーーでは、“美意識”はどうですか?

石井:私、この前、ある男性選手に『石井さんメイク薄くなってない?』って言われて、ショック受けてメイク濃くしました(笑)。気づかないうちに手を抜いてたんですよ。言ってくれた選手に感謝です。その時にもう一度気合いを入れ直して、前検日はばっちりメイクにして写真撮ってもらうようにしてます。

ーーそのとき、自分の中に気のゆるみがあったのでしょうか。

石井:あったと思います。朝眠いからちょっと今日はいいやとか…。絶対ダメ!! 気合いはメイクから(笑)。

佐藤:この流れだと私やばいかもしれないです…。レース場で常にすっぴんで…。

ーーえーっ!

石井:言っちゃっていいですか? 摩弥ちゃん、かわいいからですよ!(笑)

佐藤:ファンデーション塗るとヘルメットについちゃうんですよ。それがすごくイヤで…。ちゃんとメイクしてる後輩の子もいるので、えらいな、私もやらなきゃなとは思うんですけど、なかなか…。まつエクとアートメイクしてマスクして、すっぴんだけどすっぴんではないみたいな、ギリセーフかなと思ってるんですけど…。美意識はないわけではないんですよ。たまに反省してます(笑)。

石井:(笑)

佐藤:最近はオンラインのイベントが多くて、下はパジャマのままだったりとかして…(笑)。

石井:わかります、後ろ髪はぼさぼさとか(笑)。

佐藤:見える部分はちゃんとしてます。一応、女子レーサーの代表みたいな感じでいてるつもりはあるので(笑)。

(一同爆笑)

目指すは「レジェンド」!

ーー輝かしい成績を残しているおふたりですが、つらいことも多かったのではないかと思います。「もうやめたい」と思ったことはありますか?

佐藤:選手になってからは一度もないです。養成所の時は帰りたいと思いましたけど(笑)、選手をやめたいとは思ったことはないですね。人間関係とか整備グループとか、人に恵まれているのが大きいです。

石井:私も一切ないですね。デビュー当初はきついなぁってときはありましたけど、ガールズケイリンができたことも奇跡ですし、好きなことしてお金を稼げているなんて本当に感謝してるので、一度もないですね。

ーー強い選手が増えてきて、前より勝ちづらくなっても?

石井:はい、ないです。80歳まで続けてレジェンドって呼ばれたいんです。

佐藤:私も! 「あのおばあちゃんまだバイク乗ってんの!?」って言われたい。

石井:言われたい!

ーー以前と比べて心身の変化を感じたことはないですか?

石井:1年目、2年目… そして今が10年目、どんどん楽しくなります。競輪は積み重ねがあればあるほど味が出てくる競技なので。経験すればするほど、勝ち方がわかるようになると思います。だからどんどん面白くなるし、私は体力はめちゃくちゃあるので(笑)、練習もいっぱいできる。忍耐力はあります。だから80歳まで現役でいけるかな!? 「もう、あのおばあちゃんやめろよ~」って言われながら(笑)。

ーーやっぱりすごいです。楽しみながら続けているから強いんですね。佐藤選手はどうですか?

佐藤:現状はすごく充実してる選手生活です。たぶん、ここまである程度順調に来てるので。もしかしたらこの先勝てなくなって、後輩にどんどん追い抜かれて、きつくなってやめたいと思う時が来るかもしれないけど…。師匠や周りに恵まれてるから、私は楽しくオートレースができているんだと思います。

競技の“顔”として意識していること

ーーやっぱり楽しめることがトップに居続ける秘訣かもしれないですね。では、80歳まで現役でいるために(笑)、今後必要なのは何だと思いますか?

石井:新たなことを見つけ続けて、つきつめること。次々いろんな情報がたくさん入るので、何が自分に合っているのか模索し続けることかなと思います。

佐藤:ちょっと近いかもしれないんですけど、私もとにかく成長し続ける、年を重ねても成長をあきらめないこと。それが結局成績に繋がると思うんです、現状維持をしようと思ったら、下がっていってしまう気がするんですよ。上を目指しながら10年、20年と時間が経って、成長は難しくなっていくと思うんですけど、成長したい気持ちさえ持っていれば続けられるんじゃないかなって。

ーー長年やっていくなかで新鮮さや課題を見つけることはより困難になりそうです。

石井:それがなくてですね。今日もアマチュアの男の子に体幹のトレーニングを何してるか聞きました。そうなんだ! 私も取り入れる!って。まだ知らないことがたくさんあるんですよ。新人選手にもベテラン選手にも、聞けば聞くほど出てくるから、新しいものは見つかると思う。本当に無限だと思います。

佐藤:終わりがないんですよ、整備って。10年やってても試したことないセッティングの方が多くて、まだやってないことがいっぱいある。オートレースって音が魅力でもあるけど環境問題もあって。マフラーが改良されたり、消音になる新しいものが出てくるとそれに合わせたセッティングを選手が研究して編み出していく。それが楽しいって思えるので、まだまだ見えてない世界は多いのかなと。

ーー変化を恐れて現状維持する人も多いと思うけど、おふたりとも変化を恐れずいろいろ試してみる方なんですね。

佐藤:変化は割と楽しめるかもしれないです。変わることによって、せっかくやってきたことが通用しなくなる不安もあるんですけど、逆にもっと人に差をつけられるかもしれないっていう希望もある。それが楽しいって思ってるかもしれないです。

石井:私もそうですね。

ーーでは、次回の開催に向けて、目標をお願いします!

石井:次回はオールスター競輪のガールズドリームレースになりますが、今年はファン投票で2位に選んでいただいて、7,000人以上の人に投票していただいて、うれしくて本当に泣きそうでした。本当にありがとうございます! 毎年オールスターは恩返し、感謝の気持ちで走っています。どう勝つのか今から考えていきたいです。次こそ期待に応えたいと思います。 応援してください!

佐藤:最近なかなか成績が出せず優勝から遠のいてしまっているんですけど、今回はパーツを変えたり新しい試みをしようと思っています。いい流れをつかめるように、整備内容もそうですし、結果につなげられたらいいなと思います!

普段のレースではなかなか見られないリラックスした表情も見せてくれたふたり。変化を恐れず、楽しみながら取り組んでいることがふたりがトップレーサーとして走り続ける所以なのだろう。これまで打ち立ててきた記録に満足せず、オートレース界と競輪界の“レジェンド”を目指すふたりの飽くなき挑戦から、今後も目が離せない。

お知らせ

競輪総合メディア「netkeirin」では対談の前編を配信中です。

【石井寛子×佐藤摩弥】一生満たされない“1着欲”! 女性トップレーサーが勝負の世界で生き抜く美学を語る - netkeirin特派員 | 競輪コラム - netkeirin(ネットケイリン)
6月に500勝を挙げガールズケイリン界をけん引する石井寛子と、44年ぶりの女性オートレーサーとして数々の快挙を成し遂げてきた佐藤摩弥。活躍の舞台は異なるものの、彼女たちは常にトップ戦線で戦い、歴史を塗り替え続けてきた。今回、netkeirinとオートレース専門アプリ「競単」のコラボ企画として特別対談が実現。人気と実力、...

また、今回の対談を記念して「石井寛子選手・佐藤摩弥選手ツーショットチェキ&佐藤摩弥選手直筆サイン色紙をプレゼントいたします。

「競単」「netkeirin」どちらからもご応募頂けます。それぞれサイン色紙が異なりますので、ぜひこの機会に「競単」「netkeirin」の両方からご参加ください。

「競単」:ツーショットチェキ&佐藤摩弥選手サイン色紙をセットで5名様

「netkeirin」:ツーショットチェキ&石井寛子選手サイン色紙をセットで5名様

※応募受付期間:8/15 (月)23:59まで

競単からの応募詳細はこちら https://keitan.jp/news/253

netkeirinからの応募詳細はこちらhttps://keirin.netkeiba.com/keirinmatome/detail.html?no=4253

更に「競単」では、今回の対談を記念して新規登録限定キャンペーンを8/15までの期間限定で開催いたします。

アプリをインストールして、以下の招待コードをアプリで入力すると、全員に300円分、さらに抽選で10名様に競単マネー5,000円分が当たるキャンペーンも実施致します。

こちらの招待コードを、アプリインストール後にマイページより入力して下さい。

招待コード【keitan-girl】

※招待コードの入力はアプリインストール後24時間以内のみ可能です。ご注意ください。

撮影:Kenji Onose

ヘアメイク:岡田詩織

取材:二宮歩美

構成:netkeirin編集部

※制作スタッフ全員が抗原検査陰性を確認し、適切な距離をとって取材・撮影を行いました。

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